強力なサンリオIPを教育領域に活かすエデュテイメント事業に大きな可能性を感じた
-サンリオ入社までのキャリアを教えてください。
これまでのキャリアでは一貫して「子ども向けコンテンツ」の制作に携わってきました。最初の企業では、教科書、教材コンテンツの制作を担当しました。公共性と正確性が求められる領域で、1つの案件に4年をかけるような、長期的な品質管理も経験しました。
前職では子ども向けの出版社に勤めており、作家の方と二人三脚で原稿に磨きをかける編集業務に取り組みました。その中で私が重視してきたのは、子どもの日常や興味を入口として、「学び」へ無理なくつながる導線を設計することです。子どもが本や教材を手に取り、気づけば知識や言葉を獲得していく。そうした体験をどう作るかを、教科書や絵本の制作を通じて突き詰めてきました。
-サンリオを選んだ決め手は何でしたか?
前職の編集会社は小規模でしたが、企画から入稿、さらには販促までを一気通貫で担える点に魅力がありました。一方で、次第に「チームとして規模の大きなプロジェクトを動かしたい」という思いが強くなりました。
また、学生時代に新規事業のベンチャーで働いた経験から、ゼロから構想して形にする面白さをもう一度味わいたいと考えていました。そんな折、サンリオのエデュテイメント事業部の募集を知り、サンリオキャラクターという強力なIPを教育領域で活用できる点に大きな可能性を感じて、入社を決めました。
-現在の仕事内容、担当領域を教えてください。
現在は、シニアマネージャーとして「エデュテイメント事業」における新規案件の推進を担っています。私たちが掲げるエデュテイメントとは、教育(Education)とエンターテインメント(Entertainment)を融合させた概念です。キャラクターを軸としたサンリオならではの力を活かし、子どもたちが遊び感覚で夢中になりながら学べる体験の創出を目指しています。
業務内容は、事業計画の策定からパートナー企業との提携交渉、ジョイントベンチャー(JV)の設立・運営まで多岐にわたります。中でも、大手教育サービス企業と共同で立ち上げた英会話スクール『We Act!』の事業運営を中心に担当しています。2024年11月末に実験校を開校し、2025年1月から本格的なレッスンを開始しました。動画制作会社やデザイナー、教育担当者など多職種が関わるチームの橋渡し役として、ビジネスとクリエイティブの両面からプロジェクト全体を統括しています。
没入感のある物語で描く、サンリオならではのエデュテイメントの形
-サンリオならではの新規事業の立ち上げについて教えてください。
一般的なスタートアップでは、実用最低限で小さく試し、検証を重ねながら磨き込んでいくのが定石です。一方で、サンリオのIPを起用した事業では、ブランドイメージを損なわないために、初期段階から高い品質と本格的なサービス体制を整える必要があります。
実際、英会話スクール事業の立ち上げでは、 教材となる動画制作、キャラクターの世界観を体現した空間デザイン、サービスを支える運用システムの構築など、多岐にわたる業務を並行して進める必要がありました。性質の異なるこれらの要素を、一貫したブランド体験へと昇華させることは、私のキャリアにおいても大きな挑戦となりました。
-品質と運用を両立させるために、どのような工夫をされたのですか?
意思決定の基準は、常に「エデュテイメント」として成立しているかどうかを重視しています。企画段階から「学びとして成立するか」と「エンターテインメントとして子どもが夢中になれるか」を慎重に見極めています。どちらか一方でも水準が満たせない施策は見送る、という判断基準を徹底してきました。
設計面では、子どもたちが日常の中で自然に英語に触れられるよう「生活動線」を意識しています。サンリオの英語教材『サンリオイングリッシュマスター』の動画教材では、身近な出来事から科学的なトピックまで幅広く扱っています。こうした設計によって、日々の暮らしのなかに英語が溶け込む体験を目指しました。
この「日常への溶け込み」を一歩進め、より能動的な学習体験として形にしたのが英会話スクールです。ここでは、サンリオキャラクターを単なる案内役ではなく、「映画制作のスタッフ」という役割で登場させています。子どもたちはキャラクターと一緒に映画を作り上げる「制作現場の一員」となり、そのプロセスを通じて必要な英語を主体的に学んでいきます。キャラクターを学びの物語の中核に据え、没入感のある体験に仕立てることが、サンリオならではのエデュテイメントの形だと考えています。
「子どもたちの喜び」を共通の判断軸に。JV・デザイン・法務との緻密なバランス調整がビジネスを成功に導く
-外部パートナーと事業を共創する際、心がけていることと、あえて今回の新規事業をJVとした理由について教えてください。
判断の起点としているのは、「相手企業とサンリオ、双方の価値を最大化し、責任を持って事業を成長させられるか」という視点です。
社外の提携を検討する際は、サンリオキャラクターの活用が相手企業の事業にどのような付加価値をもたらすかを丁寧に見極めます。コンテンツ開発の連携はもちろん、売上シミュレーションを通じて事業の成立性も検証します。
この「責任を持って事業を成長させる」という決意を、私たちはJVという枠組みを構築することで明確にしました。あえてライセンス許諾に留めなかったのは、サンリオが経営主体として深く関与する覚悟を示すためです。教育運営のノウハウを持つパートナー企業と、クリエイティブを担うサンリオが、双方の強みをJVという一つの組織に統合することで、生徒やスクール運営に携わるオーナーの方々に対しても、「サンリオが永続的に取り組む事業である」という確かな信頼感を提供できると考えています。
こうした事業の骨格を支える現場では、社内の専門部署との連携が生命線となります。エデュテイメント事業部専属のデザイナーとは、オリジナルのサンリオキャラクターであるバディエディのデザイン監修において、ブランドの一貫性を守るための対話を日常的に重ねています。また、ビジネスの根幹である「契約」においては、法務部門とも密に連携します。サンリオとしての厳格な規定を守りつつ、相手先の意向も汲み取り、双方の価値を最大化する「着地点」を設計していきます。この緻密なバランス調整こそが、ビジネスを成功に導くための鍵であり、事業推進を担う私の重要な役割だと考えています。
-クリエイティブとビジネスの両立が難しい場面では、どのような基準で判断されていたのでしょうか?
常に意識しているのは、「共通の主語を『子どもたち』に置くこと」です。例えば、デザインのレギュレーションを優先しすぎると、教育的効果が損なわれることがあります。一方で、運用の効率(コストや工数)を優先しすぎれば、サンリオの世界観が壊れてしまう。意見が食い違ったときは、「それは、教室にいる子どもたちが一番喜ぶ形か?」という問いに立ち返ります。専属デザイナーや法務、そしてパートナー企業など、各部門の専門性はそれぞれ異なりますが、ゴールは同じです。私はその間に入り、各領域の専門用語を翻訳しながら、双方が誇りを持てる着地点を設計することを心がけています。
それぞれのライフステージに寄り添い、「サンリオと共に過ごす時間」をつなぐ
-増田さんが描く「エデュテイメントによるLTV (顧客生涯価値)向上」の次なる展望を教えてください。
エデュテイメント事業部の存在意義は、サンリオとお客さまが接する機会や時間を広げ、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めていくことにあります。
乳幼児期に『サンリオイングリッシュマスター』を通じてキャラクターを好きになっていただき、学童期には英会話スクールなどで関わり続けていただく。さらに大人になってからも、グッズやサービスを愛用していただけるよう、ライフステージに寄り添いながら、『サンリオと共に過ごす時間』を途切れない体験としてつくっていきたいと考えています。
その実現に向けて現在は、事業計画の策定やWebマーケティングなど、自分にとって新しい専門スキルを貪欲に吸収しています。それらを強みとして磨き上げ、サンリオにとって第2、第3の矢となる新規事業を構想・実装することが直近の目標です。「学びの場を面白くする」という軸は変えず、サンリオだからこそ実現できる教育の可能性を形にし続けていきたいと考えています。
-サンリオに入社を希望する方たちへ伝えたいことは何ですか?
サンリオの新規事業は、華やかな企画立案だけで完結するものではありません。運用設計から他社交渉、契約実務、体制構築まで、泥臭いフェーズも自らハンズオンで担う覚悟が必要です。ブランドの規定を厳格に守り抜き、同時にビジネスを成立させる。この二つを高い次元で両立させて初めて、サンリオの事業は形になります。どちらか一方が欠けることは、私たちの選択肢にはありません。
そして何より大切なのは、お客さまの反応を「答え」として受け止める姿勢です。子どもたちが夢中になって学ぶ姿や、保護者の方からの信頼。そうした実感のある反応を自身の原動力にできる方と一緒に、サンリオのキャラクターが世界中の子どもたちの学びを変える未来をつくっていければ嬉しいです。