中塚 亘
株式会社サンリオ常務取締役。
オリエンタルランド、A.T.カーニー、ボストン・コンサルティング・グループなどを経て現職。社長室及び事業戦略本部を担当し、マネジメントPDCAサイクル高度化や部門/会社横断プロジェクトの推進、加えてWeb3.0事業や教育事業、IP創造部など新規事業領域を管掌。


「確固たる美意識を持った社員が多い」と感じたのが、入社のきっかけだった
経営コンサルタントから転職し、サンリオへの入社を決めたきっかけを教えてください。
経営コンサルタント時代にサンリオと一緒に仕事をしたのが、きっかけの一つです。もともとホスピタリティや消費財の業界などに関心があり、コンサルティングの仕事についても、その関連業界を専門としていました。サンリオとコンサルタントとして一緒に仕事をした当時に「もの凄くポテンシャルがある会社だな」と感じたことを覚えています。
物心ついた頃から日本は低成長と言われていましたが、世界から日本が後退していきつつある中で、サンリオの持つ「ソフトコンテンツのパワー」を肌で感じました。サンリオのコンテンツが、日本から世界へ羽ばたき、やがて世界を牽引していくことができるのではないかと考えたのです。
その後、ちょうど社長交代のタイミングで社長と「これまで60年間培ってきた文化の良いところを残しながら、次のサンリオをいかに創っていくか」を話す機会があり、本当に長期的なビジョンを持っていることに感銘を受けました。そして、自身もこの長期ビジョンの実現に是非とも貢献したいと考え、入社を決めました。
外部からコンサルタントとして支援していくこともできたはずですが、どうして入社を決めたのでしょうか。
社長に限らず、サンリオの社員は面白い人が多いと感じたからです。もう少し深く言うならば、サンリオには「何が美しいか」という確固たる感性や直感といったような美意識を持っていて、最終的にその自身の美意識を信じて意思決定できる人が多いのが他社と比べたときに特徴的だと思いました。
例えば、今後日本がソフトコンテンツで世界に対して勝負に出るために有効なキャラクターは何かという問いに対して、「分析結果や論理的な考察を基にすれば別のキャラクターを世界で売り出すべきだけれども、私はこのキャラクターが好きだから、どうしてもこっちのキャラクターで勝負したいんだ」、とか。自分の意志や野心を持つことはロジカルさが優先されるこの現代において大事にすべき価値観であり、そういった人たちと仕事をすることは非常に価値があると感じます。
自分の美意識を大事にしながら意思決定できる人が、最終的には頭一つ抜け出すのではないかと考えています。分析を基にいろいろと考え、それでも最後の最後は自分自身の美意識に基づいて決断し、責任を取る。そういう感性や直感を大事にできる機会が、これからの私たちの人生を豊かにする何かを創っていくのではないでしょうか。
サンリオの強みである「楽しさ」を通じて、教育課題を解決したい

現在担当されている新規事業で、実現したいことを教えてください。
サンリオでは「みんななかよく」を経営理念に掲げています。どんな人もたったひとりで生きていくことはできません。ともに生きる仲間と信じあい、仲よく生きていく世界をサンリオは目指しています。
「みんななかよく」という理念に立ち返ると、やはり新規事業を通して社会課題を解決していく必要があります。ESGの視点ですが、私たちは人という資本や水、空気、電気といった環境資源を使いながらビジネスを推進していますから、人にも環境にも社会にもお返しをしていきたいという思いがあります。新規事業こそ、社会への還元につながる事業であるべきです。
サンリオ=キャラクターを通じたエンターテイメントのイメージが強いですが、社会課題解決を目指した事業も立ち上げています。具体的には、どのような領域の課題解決を目指していくのでしょうか?
サンリオでは現在、エンターテイメントと教育を掛け合わせた「エデュテイメント」で教育に関する社会課題を解決していこうとしています。アメリカでは以前から起きていたことですが、日本でも近年教育格差が拡大し、格差の固定化が生じ始めています。
サンリオが提供している「楽しさ」は、教育格差の課題に対して効果的な解決方法を提供できるのではないかと考えています。「エデュテイメント」という考え方が確立し、実際に様々なソリューションが提供できれば、ただ遊んでいる、楽しんでいる中で、自然と知識を身につけてもらうことができます。教育のガイド役として私たちのクリエイティビティを盛り込んでいくことで、より学びやすくなり、学習の効果を高められるのです。
そのようにして格差の解消にアプローチしていくだけでなく、最終的には、学習した内容を友人同士で称賛し合えるような仕組みづくりを行うのが理想です。例えば、英語を単に知識として学ぶだけでなく、実際に英語を通して異文化の人とコミュニケーションができるようになり、みんなが繋がりなかよくできるような環境を創っていく。教育に限らず、様々な領域の社会課題解決の先に、「みんななかよく」の世界を実現していきたいですね。
サンリオで自分なりの「野心」に挑戦してほしい

世界を見据え、社会課題解決への新しい挑戦をする中で、若手や今後入社する社員に期待することは何ですか?
例えば「日本発世界へ」など、「挑戦」する姿勢を重視しています。目の前の仕事をただこなすことに留まらず、大きなビジョンや野心を持ってほしいですね。教育格差など一人では解決できない問題であっても、それを解決したいという強い思いを持つことが大切です。強い意志を持った人が集まれば、難しい課題でも本当に解決できることがあります。「これが美しい」「これを実現したい」という自分なりの判断軸を持ち、まずはなんでも挑戦してみるという気概を持つことが大事だと思っています。
サンリオには、挑戦を応援してくれる環境があるように感じています。
そうですね。まずは何よりもやってみることを重視しています。3回失敗しても4回目で成功すればいいんです。失敗しても、何回でも挑戦すればいい。エジソンだって何回も失敗を経験していると言われていますが、最後に成功したものだけが今でも取り上げられています。
大きなビジョンを持つ人にとって、サンリオは絶対に面白い環境だと感じています。社会という大海原でサバイブしていくためのマインドセットを身に付ける場を提供できると思いますし、それぞれのビジョンを実現するための機会も提供できます。サンリオを通して、ぜひ自己実現を目指していってもらいたいですね。そのためにも、自分なりの美意識や野心を持つことを恐れないでください。
これからサンリオで活躍したいと考えている方に向けてメッセージをお願いします。
ぜひ自分が社会に、そして世界にどういうインパクトを与えたいのかを一度しっかりと考えてみて欲しいと思います。そのためには、様々なものに感化される経験が重要です。例えば海外に旅に出たり、新しい環境で何かにチャレンジしてみたり、いろいろな経験をどんどんして、感受性を高めていってほしいです。
そして、その野心を実現するためのキャリアイメージを、一度自由に考えてみて欲しいと思います。サンリオは、自己実現に必要なスキルや知識の習得について責任を持って支援します。繰り返しになりますが、自分の美意識を軸に決断し、「これがいいんだ」と自信をもっていえることが大切です。社員が700人いれば700通りのキャリアがあると思っています。701通り目のキャリア、701人目をお待ちしています。