大塚 泰之
株式会社サンリオ常務取締役。
ダイエー、デロイトトーマツコンサルティング執行役員を経て現職。
物販事業本部とライセンス事業本部を担当し、国内事業全般を管掌。


サンリオを、世界中で愛され尊敬される企業にしたい
コンサル業界から事業会社に転身された理由は何でしたか?
大きく二つあります。一つはサンリオが100年企業になるための礎を築くため。もう一つは、サンリオを日本発のIP企業として世界中で愛され尊敬される企業にしたい、という想いからです。
前職のコンサル業界では、コンサルティング業務が徐々にテンプレート化してきており、代替可能になってきていると感じています。一方、サンリオに代表されるIPビジネスは、簡単に代替可能ではありません。自らが生み出している価値、という点においてサンリオは100年企業になるだけの素晴らしい価値があります。だからこそ、コンサルタントとしての間接的な関与ではなく、会社の一員として主体的な関与をしたいと考えました。
サンリオのビジネスが安定的に成長し続けられるための基盤が整っている状態にすることが、私のミッションです。具体的には、売上を増やすだけではなく、一定の売上から一定の利益を創出し、それを再投資することでビジネスがより大きくなる循環を作ることを早急に進めています。
IPビジネスを通して、社会に提供したい価値は何ですか?
キャラクターが提供できる価値は様々ですが、サンリオのキャラクターは特に「寄り添い」を提供できます。すごく単純な言葉のようですが、今の時代においてはとても大事な価値観だと思っています。
今は日本だけでなくグローバルでも少子高齢化が進んでいる国が多いうえ、コロナ禍で外出することや人と会うことが制限されるなど、息苦しい時代です。その中で、サンリオのキャラクターを通じて世界中の人々に「寄り添い」や「癒し」を提供したいと考えています。それによって、世界中を笑顔でつなげることができると本気で考えています。
実際、コロナ禍で一時赤字になったものの、大きく業績が回復していますよね。
KAWAIIを通した「寄り添い」・「癒し」への需要が、やはり大きくあったのだと思います。前職の時にもサンリオと仕事をしたことがあり、他社キャラクターとの違いを調べた際に印象的な結果が出たことを覚えています。
有名な某他社キャラクターは「正義」や「強さ」などに共感を得ていたのですが、サンリオキャラクターに対する共感は圧倒的に「癒し」が多かったのです。人に寄り添い、癒してくれる(と思ってもらえる)キャラクターが当社の強みの一つであり、それがキャラクターの世界観にも反映されています。
これまでサンリオと接点がなかった人にも、サンリオのファンになってもらいたい

今後の国内事業の展望についてお伺いしたいです。
これまでのサンリオにおけるビジネスサイクルは、徹底的にかわいいモノを作り、それらを店舗で売ることでファンを獲得し、サンリオピューロランドへ足を運んでもらい、よりサンリオキャラクターを好きになってもらう、というやり方でした。今後は他社とのコラボレーションや新しいキャラクターの創出、新たな接点チャネル開拓等々を通じて、これまでサンリオと接点がなかった人にもサンリオのファンになってほしいと考えています。
また、キャラクター育成の観点では、映像投資やWeb3.0を見据えたビジネス展開など、新しい領域にも積極的に投資することで既存ビジネスの強みをより強固にしていきたいと考えています。
基盤強化と新しい挑戦をする中で、若手や今後入社する社員に期待することは何ですか?
サンリオは日本発の企業でありながら、ビジネスはとてもグローバルです。日本のKAWAIIをグローバルに流通させるビジネスを、日本に閉じずグローバル規模のマーケットを相手に展開しているという意識を持つことを、現社員の方々にもこれから入社する方々にも期待したいです。
サンリオでは多様なビジネスを行っているので、何にでもチャレンジしたい人が来てくれると良いと思います。「これしかできない」「これしかやりたくない」は、サンリオで働くうえではもったいないです。ビジネスには星の数ほどの業務があって、その人が「やりたい」と思っていることは、今その人が知り得るごく一部に過ぎないかもしれません。
グッズなどの商品企画や、キャラクターなどのIP創出、そのライセンスの営業、教育事業、Web3.0事業など多岐にわたるビジネスを総合してサンリオの価値が作り出されています。自分が従事する業務によってどんな価値が生み出されているのか、そして自分が得意なことは何なのか、様々な業務を体験しながら見つけてほしいと思います。
何よりも大事な顧客接点。お客様がどう捉えているか理解するためには

今、サンリオの新入社員だったら何がしたいですか?
今だから言えることかもしれないですが、どんなビジネスでもお客様がどう捉えているかを理解することが大事です。店舗やEC、ライセンシーなどの顧客接点で、消費者がどのように、どれだけ当社のIPを愛しているのかを理解できる業務に就きたいです。
IPの価値は様々なもので作られているため、お客様に届く最終接点で何が起きているのかを完全ではなくても理解する必要があると思います。お店に行けば、常に「かわいい」と喜んでくれるコアなサンリオファンの方々はもちろんいますが、ふらっと入店されるコアファン以外の方も大勢いらっしゃいます。
大枠でサンリオのIPに好意を持っている人に向けたビジネスをしているため、実際お客様がお店に入った時にどのようなアクションを取っているのか、何を買ってくれているのかを観察することが、マーケターとしてとても大事です。「マーケター」とは、狭義の意味ではなくマーケットに向き合う全業務担当、を指しています。こうしたお客様視点はこれからサンリオに入社される方にも意識してもらいたいことでもあります。
これからサンリオで活躍したいと考えている方に向けてメッセージをお願いします。
サンリオだけに限った話ではないですが、様々なことに悩みながらもチャレンジし続けてください。
時には会社の戦略に合わせて、自身が意図していなかったミッションが課されることもあると思います。そのミッションに対して、やりたくないという気持ちだけで後ろ向きになるのではなく、「本当は楽しめるものではないか?」「自分にとってプラスになるのではないか?」と考えてみてください。その仕事が自身に任された意味を考えて、次のステップに向けた機会につなげようと意識してみてください。当時は意味がないと思って取り組んでいたことでも、5年後10年後に線になってつながることがきっとあるはずです。