「本物の体験をともに創る」—新たな価値創造への挑戦—
F1アカデミー×サンリオグローバルステークホルダー対談
F1アカデミー
Managing Director
Susie Wolff
代表取締役社長
辻󠄀 朋邦Tomokuni Tsuji
「モータースポーツ」と「ハローキティ」という、従来の枠組みを超えたコラボレーションで世界に驚きを届けたF1アカデミーとサンリオ。本対談では、この取り組みが実現した背景や両者に共通する想い、そしてこの協業を通じて目指す未来について、サンリオの代表取締役社長の辻󠄀朋邦とF1アカデミーManaging DirectorのSusie Wolff氏が語ります。
―2025年11月、アメリカ・ラスベガスで開催されたF1アカデミーのシーズンフィナーレにおいて、F1アカデミーとサンリオは初のコラボレーションを実施しました。今回のコラボレーションには、どのような思いや狙いがあったのでしょうか。
Wolff:まずF1アカデミーについてご紹介します。F1アカデミーは、女性ドライバーの育成と支援を目的として、F1が創設したレースシリーズです。モータースポーツは長い間、男性中心のスポーツと見られてきました。しかし近年、F1のファン層は大きく変化しています。現在では世界のF1ファンの42%が女性であり、とくに18歳から24歳の女性ファンが最も急速に増えています。そうした変化のなかで生まれたのがF1アカデミーです。私たちは18名の若い女性ドライバーに競技の機会を提供し、将来的にはF1の舞台に女性ドライバーが誕生することを目指しています。モータースポーツは世界でも数少ない「男女が同じ舞台で競えるスポーツ」です。だからこそ、より多くの女性が挑戦できる環境を整えることには大きな意味があります。
辻󠄀:私自身、子どもの頃からF1を見て育ってきたので、F1とのコラボレーションは長年の夢の一つでもありました。今回のプロジェクトが実現した際も、率直に言って本当にうれしかったです。
また、当社の事業という視点でも、サンリオが大切にしてきた「kawaii」という価値と、F1が持つスピードやテクノロジー、グローバルな世界観が出会うことで、これまでにない価値が生まれるのではないかという期待がありました。当社は現在、10年間の長期ビジョン「グローバルIPプラットフォーマー」を掲げています。エンターテイメントの領域を広げていくなかで、スポーツは非常に重要なカテゴリーだと捉えています。今回の取り組みは、その方向性を象徴するものでもありました。
Wolff:私も同じ気持ちでした。モータースポーツには今もなお、「男性の世界」という先入観があります。しかし私は昔からピンクが好きですし、かわいいものも好きです。そしてレーサーでもあります。だから私は以前から、「kawaii」と「速さ」、そして「競技としての本格性」は両立できると信じていました。ハローキティとのコラボレーションは、その考えを形にする絶好の機会だったのです。私はよく、「レースが好きでもボーイッシュである必要はない。ハローキティが好きでもいいし、F1が好きでもいい。その両方を好きになっていい」と言うのですが、このコラボレーションには、まさにそうしたメッセージが込められていました。
辻󠄀:スージーさんご自身にも、ハローキティに特別な思いがあったそうですね。
Wolff:今から20年近く前、私がレーシングドライバーだった頃のことです。メルセデスが私のレーシングカーを鮮やかなピンク色に塗ったことがありました。当時の私は、女性ドライバーとして認められたいと思っていたので、「ピンクの車」という見られ方に不安を感じていました。ところがサーキットに行くと、小さな女の子たちがたくさん集まってきて、「これ、ハローキティカーなの?」と目を輝かせながら聞いてきたのです。その瞬間、私は気づきました。表現には人の心を動かす力がある。ピンクの車が、彼女たちをレースの世界へ引き寄せていたのです。そして約20年後、F1アカデミーを率いる立場となった私が、ハローキティとのコラボレーションを実現させることになりました。人生は不思議ですね。だからこのコラボレーションには、私にとって特別な意味がありました。F1アカデミーが初めて本格的な商品コレクションを展開するうえで、サンリオというブランドと共創できたことは、とてもうれしく思います。
辻󠄀:私は、サンリオのキャラクターには人と人とをつなぎ、笑顔にし、新たな体験や感動を生み出す力があると信じています。スージーさんの経験のように、スポーツの世界でも、ジュニア世代やそれまで接点のなかった層に対する「入口」として、大きな価値を提供できるはずです。今回でいえば、もともとサンリオキャラクターに関心がなかったF1アカデミー/F1ファンと、モータースポーツへの興味が薄かったサンリオファンが、今回のコラボレーションによって新たにファンとなるような相互送客ができたと感じています。そうした意味で、このコラボレーションはF1アカデミーと当社の思いが重なり合い、新しい価値と可能性を生み出す取り組みだったと考えています。
―今回のコラボレーションでは、専用観戦席である「ハローキティ・グランドスタンド」の設置や、全36種類の「HelloKitty and Friends x F1 Academy」限定コレクションの販売、サーキットでの交流イベントが展開されました。実際の反響はいかがでしたか。
Wolff:正直なところ、ここまで大きな反響になるとは想像していませんでした。ぬいぐるみは発売から2日で完売しましたし、ボンバージャケットなどのアパレル商品も非常に高い人気を集めました。Sanrio,Inc.のデザインチームの企画・デザイン力が素晴らしいものだったと確信しています。私自身、世界中のファンから数多くのメッセージを受け取りました。多かったのは、「かわいさとスピードが融合している」「こんなモータースポーツは見たことがない」という声です。
辻󠄀:デザインはもちろん、製造工程に至るまでこだわりを込めた商品を評価いただき、私たちも感慨深い思いです。しかし、事業という視点では、本質はそこではないと考えています。重要なのは、このコラボレーションが話題を生み、新しいファンとの接点をつくったことです。サンリオのビジネスは、単なる足し算ではありません。ブランド価値が高まり、その結果として新たなビジネスにつながっていく。私はよくそうしたIPのモメンタムを、「掛け算のビジネス」と表現しています。今回の取り組みは、まさにその好循環を生み出してくれたと思っています。
Wolff:話題性という意味で、今回のコラボレーションの影響は大きく、モータースポーツの世界では前例のない画期的な取り組みとなりました。F1はモータースポーツの頂点です。ビジネスの視点でも、「kawaii」とレースカルチャーを融合させ、商品展開していく可能性を広げました。ハローキティという象徴的なキャラクターがサーキットに与えた衝撃は、多くのインスピレーションを生み出しています。私自身、初めてレーシングヘルメットをかぶったハローキティのビジュアルを見た瞬間を決して忘れません。本当に素晴らしい光景でした。
辻󠄀:当社のキャラクターが、モータースポーツの世界でも受け入れていただいたことは、私たちにとっても大きな喜びです。当社が提供するのはエンターテイメントであり、スポーツの世界で新たな笑顔や感動を生み出せたことは、グローバルIPプラットフォーマーとしても非常に意義深い経験でした。プロジェクトを推進した米国子会社Sanrio,Inc.のメンバーも、F1アカデミーとともに達成した大きな挑戦にまだ興奮冷めやらぬ様子で、北米のみならず全国へこのプロジェクトを広げていくべく、成長し続けたいと語っています。我々のデザインに高い評価をいただいたことも確かな手応えとなっており、こうした期待に応えられるよう、今後も新しい価値創造に挑戦していきたいと思います。
Wolff:若い人たちには、自分の情熱を信じてほしいと考えています。周囲の期待や固定観念に合わせる必要はありません。スポーツでもビジネスでも、成功への道は簡単ではありません。自分を信じること、そして情熱を持ち続けることが、困難を乗り越える力になります。かわいいものが好きでも、レースが好きでいい。そうして自分らしく夢を追いかけた先に、今回のような想像もしなかった新しい未来が生まれるのです。
―今回のコラボレーションの成功をもとに、今後はどのような展開を考えていますか。
辻󠄀:F1アカデミーとは、今後もぜひ長くコラボレーションを続けていきたいと考えています。ハローキティをはじめとするサンリオキャラクターには、国や世代を超えて人々をつなぐ大きな可能性があると信じています。
北米ではハローキティが大きな存在感を持っています。それはサンリオがグローバルIPプラットフォーマーを目指すうえで大きな可能性が広がっていると認識しています。モータースポーツはチームスポーツであり、仲間同士で助けあうテーマは当社も同様です。ハローキティだけでなく、IPポートフォリオ全体の可能性を広げながら、世界中の人々に新しい体験を届けていきたいと考えています。
当社は、価値観を共有できるパートナーとともに、本物の感動や喜びを生み出す機会を増やしていくことを大切にしています。その意味でも、本物の体験を共創することができたF1アカデミーとの取り組みは、非常に意義があったと考えています。
Wolff:私たちも同じです。今回の成功はゴールではありません。むしろスタートです。F1アカデミーはこれからも新しいファンを増やし、新しい世代に夢を届けていきます。そのためには、本当に価値観を共有できるパートナーが必要です。サンリオとは、「喜びを届ける」という目的が一致しています。だからこそ、多くの人の心に届いたのだと思います。
辻󠄀:F1アカデミーとともに、新しいファンとの出会いを創出しながら、次世代へ価値を届ける挑戦を続けていきたいと思います。同じ夢に向かって、今後も協力していきましょう。
F1アカデミーは、モータースポーツにおける若い女性ドライバーの育成と支援を目的として、F1(フォーミュラ1)が設立した女性限定のフォーミュラレースシリーズです。2023年に創設され、Susie Wolff氏の指揮のもと運営されています。このシリーズは、女性ドライバーがより上位カテゴリーへステップアップするための育成の道筋を提供しており、F1グランプリと同じ週末に開催される全7戦で構成されています。F1アカデミーは、モータースポーツ界に存在するさまざまな障壁を取り除き、サーキット内外を問わず、より多くの女性がこのスポーツに参加するきっかけを生み出すことを目指しています。女性ドライバーの活躍を後押しするとともに、次世代の女性たちにインスピレーションを与える重要な取り組みとして注目されています。