Environment気候変動への対策

対応方針

当社グループでは、「みんななかよく」の企業理念のもと、事業を通じて社会的価値を創出し、持続的に企業価値を高めていくことをめざしています。その中で、10の重要課題「サンリオ・マテリアリティ」を特定し、事業活動の創出価値を最大化させるとともに、社会課題の解決に取り組んでいます。

気候変動への対応は、マテリアリティの1項目「地球環境への配慮」に基づく重要な取り組みであり、事業活動全般において気候変動への影響度が高い活動の把握に努め、温室効果ガス(GHG)排出量の削減を進めています。また、TCFD提言に沿って気候変動にともなうリスクと機会を特定し、ステークホルダーへの情報開示に努めています。

ガバナンス

当社は、サステナビリティに関わるグループ全体の課題を検討するために、代表取締役社長が委員長を務める「サステナビリティ委員会」を設置しています。グループの気候変動対応についても、同委員会で具体的な施策や推進体制を検討することとしており、各施策の実施状況に対するモニタリングも定期的に実施しています。

サステナビリティ委員会の詳細は、推進体制/エンゲージメントをご覧ください。

戦略

当社グループは、TCFD提言に沿ってシナリオ分析などを行い、気候変動にともなうリスクと機会を特定しています。2023年のシナリオ分析では、2035年時点における「脱炭素へ向けた移行リスク・機会」「気候変動の進行による物理リスク・機会」それぞれについて影響度評価を実施しました。

影響度評価に用いたシナリオ

シナリオ概要 参照
1.5℃・2℃シナリオ 産業革命以前と比較して、世界の平均気温上昇を1.5℃・2℃に抑えるシナリオ。
国際的な目標に向けて、厳しい環境規制の導入や環境関連技術への大規模な投資が行われると想定。
  • 国際エネルギー機関(IEA)
    NZE2050、SDS、STEPS
  • 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
    RCP2.6、SSP1
4℃シナリオ 産業革命以前と比較して、世界の平均気温が4℃以上上昇するシナリオ。環境規制の導入が遅れ、各国が温室効果ガス(GHG)の排出を抑えることができず、気候変動の進行にともない、豪雨や洪水などの異常気象が増加すると想定。
  • 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
    RCP8.5、SSP3、SSP5

リスクと機会

移行リスクについては、炭素税の導入や温室効果ガス(GHG)排出規制の強化、再エネ賦課金の負担増加、エネルギーコストの上昇などによって、施設・店舗の運営やサプライチェーンなどにおける財務負担が増加する可能性があると分析しています。また、物理リスクについては、異常気象が増加することで施設・店舗の被害や営業機会の損失が生じる可能性があると分析しています。

一方、機会については、「サンリオピューロランド」のような屋内型テーマパークは、異常気象増加の影響を受けにくいため、競争優位性が向上する可能性があります。また、ショップ展開、商品、デザイン、ライセンスビジネス、価値体験ビジネス、それらを包括するエンターテイメントビジネスすべてにおいて、時代に対応し、先進していくことで、気候変動を含む社会的変化へのレジリエンスが高い組織をつくり競争優位性を向上させられるよう努めていきます。

サンリオグループに影響を与える主要な気候変動リスク​

リスク・機会​ 事業への影響​ 長期的に見込まれる財務影響額​ 計算方法​ 対応策​
移行リスク​ カーボンプライシング等による負担の増加​ 炭素税の導入や温室効果ガス排出規制の強化、再エネ賦課金の負担増加等によって、財務負担が増加する可能性​ 1.56億円​
  • 2035年を見据え、炭素税は167.5USD/tと推定
  • 株式会社サンリオ、株式会社サンリオエンターテイメントの2022年3月期の電気使用量に基づき、推計したGHG排出量、7,186tーCO2に167.5USD/tをかけ、1.56億円※の影響額を算出
    ※1USD=130円
  • 炭素税導入による財務影響の大きさを鑑み、気候変動対策に貢献していくため、GHG排出削減目標を設定し、削減の取り組みを推進
  • 課題解決の手法の一つとして、再エネルギー導入を検討
物理的リスク​ 風水害の激甚化による拠点被害・営業機会損失​
  • 風水害が激甚化し、風水災リスクの高い拠点が被害を受け、修繕コストが生じる可能性
  • サプライチェーンの寸断やインフラの停止が起こり、物販事業で営業機会を逸失する可能性
5.66億円​
  • 1店舗当たり平均帳簿価額15.8百万円※に対し、水災リスクのある14拠点を国土交通省の被害率モデルと掛け合わせ、合計約1.42億円の被害影響額を算出
  • 浸水被害の対象33拠点における営業停止による売上減少額として、合計約4.24億円の被害額を算出
    ※2022年3月期有価証券報告書を基に計算
  • 被災時の対応策の強化および各拠点ごとの洪水リスクの把握に着手
  • ハザードマップ活用した洪水・高潮リスク分析​・建物ごとのルールに則った避難経路等災害時対応方針の確認

生物多様性への対応

当社は、生物多様性の重要性および生物多様性への負荷軽減に取り組む必要性を把握しています。報告年度において生物多様性関連課題のガバナンス構築に至っておりませんが、今後の課題として認識しています。

リスク管理

当社は、環境、災害、品質、情報セキュリティ、輸出入管理といった事業全般に関わるリスクマネジメントとコンプライアンス領域を全社ベースで統合的に管理することを目的として、内部管理担当取締役を委員長とする「合同コンプライアンス委員会」を設置し、当社グループにおけるリスク対応を強化しています。
当社は、気候変動に起因する移行リスクならびに物理的リスクが、環境面のみならず経済面や事業運営面に影響を与えうることを認識しています。これらを含むサステナビリティに関わるリスクについては、「サステナビリティ委員会」でもモニタリングを実施しており、対応が必要なリスクが発見された場合は合同コンプライアンス委員会と連携して対策を検討・実施することとしています。今後も合同コンプライアンス委員会とサステナビリティ委員会が連携の上、事業面に及ぼす影響を評価・分析し、そのリスクを管理する体制の構築に努めます。

温室効果ガス(GHG)排出量削減の目標

当社グループは、2027年3月期を目標年度とする温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標を設定しています。各ステークホルダーと協働することで、Scope1,2については排出量を2019年3月期比60%削減、Scope3については売上高当たりの排出量を同10%削減する目標を掲げています。

イラスト:Scope1,2、2027年までScope1、2の排出量を60%削減(2019年度比)
イラスト: Scope3、2027年までScope3の売上高当たりの排出量を10%削減する(2019年度比)

目標の達成状況についてはESGデータをご参照ください。

温室効果ガス(GHG)排出量削減の取り組み

直営店では、全店舗でショッピングバッグをプラスチック製から再生紙などを用いた紙製に変更し、簡素化しました。
サンリオピューロランドでは、LED照明の導入を完了しています。また、国外との取引においては、CO2排出量が多い航空便は極力使用せず、船便を積極的に使用しています。
こうした取り組みを通じて、ビジネス拡大とCO2排出量削減の両立をめざしています。