倉田 あや
株式会社サンリオ執行役員 グローバル戦略室担当。
McKinsey&Company、日清食品ホールディングス、ハンガリー日清取締役/ドイツ日清取締役などを経て現職。
海外子会社と本社間の戦略対話プロセス推進、海外事業戦略策定、本社・子会社間の特定課題解決のPMO等に従事。

PMO(プロジェクトマネジメントオフィス):
企業や組織内でプロジェクトを円滑に進めるための支援部門や体制。プロジェクトマネジメントの支援、標準化、教育、リソースの調整などを行い、プロジェクトの成功率を高めることを目的とする。

世界へ日本の「かわいい」を広げるため、本社と海外拠点との連携を強める
現在の仕事内容、管掌領域を教えてください。
所属しているグローバル戦略室は、2024年4月に新設された部署で、私は2024年の7月に入社しました。仕事内容は多岐にわたりますが、基本的には名前の通り、海外でサンリオの事業を伸ばしていくための戦略を練ることです。サンリオの海外の拠点と本社経営陣とでは情報格差があるので、海外の現地法人で何が起こっているのかを、本社の経営陣は解像度高く事業理解することが求められます。それを私たちは戦略対話と呼んでいるのですが、私たちのチームがその戦略対話を深めるためのサポートを行います。これは中期経営計画に沿ったミッションです。
サンリオへ入社した理由は何ですか?
私は前職で海外現地法人のマネジメントをしており、その前は戦略コンサルティングファームにいました。もともと私のキャリアの軸は日本企業のグローバル化に貢献することであり、その実現のためにサンリオに入社しました。私がサンリオへの入社を検討していた頃、ハンガリーに住んでいたのですが、息子の同級生がサンリオキャラクターズの雑貨を持っていたり、シナモンやクロミのTシャツを着ていたりするのを目にしており、サンリオのグローバルな成長ポテンシャルを肌で感じていたことも、入社の後押しになりました。
将来実現したいことは何でしょうか。
アメリカやヨーロッパでは、かわいいものの割合が日本よりも少ないように思います。サンリオキャラクターのように、かわいくてちょっと繊細なところもあって、思わず心が温まるような、癒しがもらえるようなものがあるというのは日本のすごくいいところだと思っています。サンリオのキャラクターがグローバルでよりプレゼンスを高めていき、かわいいものが身近にさりげなくあることで幸せを感じる人が増えていってほしいです。そのためにも、まずは与えられたミッションをしっかりやりきることですね。
サンリオという会社、組織をどんな風なチームにしていきたいですか?
日本の多くの企業にとって、グローバル事業をマネジメントするのはチャレンジングだと思います。たとえば英語にたけた人材の割合を考えても、他国の企業と比較すると日本の企業は非常に難しいポジションに置かれています。言語に限らず海外進出に対して日本の企業が抱える課題は多いのですが、それをふまえて海外でどのようにマネージしていくのかにひとつの解はなく、私たちなりのやり方を見つけていかなければいけません。「サンリオはこのようにグローバルマネジメントをやるのだ」というひとつの成功事例が作れていくといいと思っています。
私が前職で現地法人のマネジメントをしていた感覚からすると、拠点のビジネスは拠点が回しています。一方で我々のようなIPビジネスではIPの価値を高めるミッションはIPホルダーである本社ですので、本社としてやるべきことはあります。本社は本社の責任を果たしつつ、基本的には拠点が拠点の判断でローカル市場においてIPを広めるための最善策を取ってもらい、私たち本社は拠点のメンバーが安心して気持ちよく働けるような場所を提供することが非常に重要だと考えています。
サンリオはこの数年間でかなり急激に売り上げが伸び、ゲームなどの新規の事業にも参入しています。それに伴い、私を含めて中途入社の社員が増えてきています。そうなると、今後は多様性のマネジメントが非常に大切になってきます。多様性の高い組織というのは強くなる可能性を秘めています。サンリオのよいところは「みんななかよく」という企業理念があり、私も含めてそれに共感して入社している人が多いということです。会社がコラボラティブにやっていける組織になっていくことで事業も成長できるだろうと信じています。
管掌している領域を通じて、社会・また世界にどんなインパクトをもたらしたいですか?
個人的には、やはり日本の企業を強くしていきたいですし、サンリオがその代表的な会社になってほしいと思います。日本のコンテンツを海外で成功させて、サステナブルに成長していける。それが日本の代表的なグローバル企業として名を連ねられることになると思います。
世界でもユニークなサンリオキャラクター。世界の市場での将来性に期待

サンリオの強みは何だと思いますか?
ほかのIPは絵本や映画がもとになっていてストーリーがありますよね。一方、サンリオキャラクターはデザインから出発しているので、明確なストーリーはありません。例えば北米の消費者に調査すると、「ストーリーに共感するから、このキャラが好き」という消費者がたくさんいることがわかります。しかしながら、ストーリーを持たないというのがサンリオキャラクターの強みでもあると思うんです。というのも、ストーリーがない分、キャラクターにどんな存在になってほしいかは消費者自身が決められるからです。消費者自身でもいいし、お友達でもお姉さんでも、ペットでもいいんですね。そしてこの特徴は、ビジネスではさまざまなコラボレーションの可能性にもつながります。そこがサンリオのすごいところだと思っています。サンリオは現状では海外の市場では今もなお成長を続けています。しかしこれは、逆にいえば今以上にシェアを大きくする伸びしろがあるということなので、私自身がとても期待しているところです。
反対に、これから克服するべき課題、サンリオに足りないものは何だと思いますか?
サンリオのキャラクターは日本発であり、そのユニークさを消さずに海外で展開していくことが求められると思います。ただ、そのためには、我々が非常に強い組織になっていなければいけません。まだまだ足りない部分は多いですが、日本のよいものを押し出してファンを増やしていく形で取り組んでいくことが必要だろうと思っています。
自分のキャリア人生で何をやっていきたいかを考え続けてほしい

今のサンリオに、入ってきてほしい学生・人材はどんな人か これからサンリオに入社する若手に何を期待していますか?
サンリオキャラクターを愛してくれる方に来てほしいと思っています。私は常にこの仕事をしていて思うのですが、仕事をしていると頑張らなければいけない場面があります。そんな時に、やはり自社のキャラクターが好きであるというのは、すごく大事だと思うんです。
もう一つは企業理念に共感できてコラボレーションを大事にできる方だと思います。長い間ひとつの組織にいたり、同じ事業に携わっていたりすると、そこで長年行われてきた方法が当たり前になってしまい、変化に対して抵抗感を抱くこともあります。そのような時に、新卒で入ってきた新入社員の皆さんや中途採用で入ってきた私たちが、フェアな目線で客観的に、同時に相手へのリスペクトを維持しながら、建設的な意見を出し合えることは非常に重要だと思います。だからこそ「みんななかよく」という考え方のもと、前向きにコラボラティブにできることが大切で、そこに共感できる方が必要です。さまざまな意見が出てくる風土は組織の大切な強みになりえると思っています。
これから就職活動をする・している学生に向けたメッセージをお願いします。
今は、人生100年時代ですから、その中でひとつの仕事だけ、ひとつの企業だけというのはおそらく現実的ではなくなっていくことでしょう。世の中も変わるし、必要とされるスキルもおそらく変わっていく中、自分がやりたいことも変わっていく可能性が高いです。そんな中で必要なのが、自分のキャリア人生で何をやりたいのか、そのパーパスを考えることだと思います。なかなか考えても答えは出ないかもしれませんが、それでもずっと考え続けてほしいです。そうすれば、今後何かを選ばなければいけないときに、「自分のパーパスはこれだから、それに向けての一歩目としてはこれがいいと思う」という感覚で選べると思うのです。
私自身は、「日本企業をグローバル化させたい」という思いを軸に仕事をしていますが、これは20代で就職したときからクリアに持っていたビジョンというわけではありませんでした。むしろぼんやりと「世界という軸で、社会へのポジティブなインパクトを出したい」と思っていて、それをどうすればいいのかを考えながら紆余曲折の末に結局この思いにたどり着きました。さまざまな人生のステージがあるなかで、自分のパーパスを見つけて行っていただけたら良いのではないかと思います。