IR Information 対処すべき課題

ボラティリティ(業績の変動性)が高いことへの対応

当社グループはこれまで、『ハローキティ』をはじめとしたキャラクターをブランドとして育て、他社にライセンスし、また、ギフト商品の企画・製造・販売を行うことで利益を獲得し事業を拡大してまいりました。その主たる収益獲得の要因は商品化権ビジネス、いわゆるプロダクトライセンスであり、『ハローキティ』を中心とするものでした。また、2015年3月期から2021年3月期まで7期連続で営業減益となるなど、過去の歴史において業績のアップダウンを繰り返してきました。その大きな要因の一つが、欧州・米州におけるプロダクトライセンスと、『ハローキティ』中心のビジネス展開に偏ったことであったと考えております。
しかしながら、2022年3月期以降は複数キャラクター展開が奏功し業績がV字回復し、2025年3月期におきましては、過去最高の営業利益を更新するなど大きな飛躍を遂げることができました。今後も成長を止めることなく、ボラティリティ(業績の変動性)の小さい事業体制を確立することを経営課題として認識しております。
業績を安定化させるには、欧米での話題性を高めること、成長をストック化させていくこと、キャラクターをはじめとするIPの属性の幅を広げていくことが必要だと考えています。欧米での話題性を高めるために映像等の投資を行っていきます。成長をストック化させていくためにファンのエンゲージメントを高めロイヤリティを向上するための取り組みを実施してきます。IPの属性の幅を広げるために従来以上に機能を強化し、他社IPやクリエイターを巻き込み、IPプラットフォームを構築していきます。

マーケティング・営業戦略の見直しによるグローバルでEvergreenなIP化

当社グループが今後長期安定成長を図る上では、IPが外的要因に依拠したブームに左右されることから脱却し、当社IPの“ブランディングを変える”ことが重要と認識しております。特に海外ではボラティリティに耐える基盤がなかったことから、マーケティング・営業戦略を見直し、グローバルでEvergreenなIP化を実現してまいりたいと考えております。EvergreenなIPとは、「常緑樹のように季節が変わっても長期間にわたって色あせることなく人々に必要とされ続けるIP」を指しており、当社のIPが外的要因のブームに左右されない、市場の中で常に認知や好意度が新鮮で維持され続ける状態を創ることを通じて市場の環境変化に耐える持続的なブランド価値を有するIPの育成に注力してまいりたいと考えております。“ブランディングを変える”取り組みとして、大型周年イベントなどの「グローバルコンテンツへの投資」や、動画配信チャンネルとの取り組みとして「グローバルプラットフォーマーとの連携」、グローバルのキャラクター横断マーケティングなどの「グローバル規模でのブランディング監修の強化」、海外各地域のニーズを起点とした「現地デザイン/現地クリエイティブの強化」を中心とする施策を実行してまいります。

グローバル成長基盤の構築

当社グループが今後長期安定成長を図る上では、北米地域や中国を中心としたアジア地域のさらなる事業拡大、現地マネジメントの強化、欧州市場の再成長、そして中東、東欧、インド、アセアン諸国、アフリカ及び中南米などの新規市場の開拓を実行していくことが求められます。海外展開の強化には、グローバルな視点によるマネジメント体制の構築、市場の変化に対応し当社の経営資本を適切にアロケートできる財務戦略及びグループガバナンスの確立が不可欠と考えております。
また、海外戦略の遂行を支えていく上で、「グローバル人材」「クリエイティブ人材」の創出といった「人的基盤の構築」、さらに、海外におけるM&Aや資本提携を含む非連続投資、またその投資を適正に測る仕組みをグローバルに導入し、当社に不足しているリソースを積極的に具備していく「攻めの財務とガバナンス」という大きな2つの成長基盤を構築することを課題として認識しております。

IPポートフォリオ拡充とマネタイズ多層化

当社グループでは、業績のボラティリティの主因を「海外におけるキティ構成比の高さ」「グッズ中心」という「価値提供の狭さ」にあると分析しており、ボラティリティの小さい長期成長の実現には、IPポートフォリオ拡充とマネタイズの多層化が不可欠であり、IPの提供価値の幅とマーケット/ターゲットの幅を拡げていく取り組みが必要と考えております。
IPの提供価値の幅を拡げていく取り組みに関しては、これまでの「グッズ中心」から、推し活等の付加価値提供、映像・ゲーム接点でのストーリー型IPの確立、教育・リアル体験等を通じたIP体験の創出といったグッズに依拠しない価値提供へと拡げていくことを考えております。
また、マーケット/ターゲットの幅を拡げていく取り組みに関しては、サンリオキャラクターのマルチIP展開の他、UGX※を活用した創作支援・二次創作関連事業の創出、マーケット起点の新規IP創造、キッズ・男児などの空白セグメントの開拓を進めてまいります。
上記を通じて創造とプロデュースの幅をさらに拡げ、IPポートフォリオとマネタイズの幅を拡げることを考えて取り組んでまいります。

※UGX: User Generated xの略称:User Generated Content,User Generated intellectual propertyなどの総称

ダイバーシティ・マネジメントの活用

当社グループは130の国と地域にキャラクタービジネスを展開しており、今後もさらに地域を拡げていこうと考えております。また、キャラクタービジネスはお子様からお年寄りまで年齢に関係なくマーケットが拡がっており、ダイバーシティの考えに根差した商品開発と企業との密接な協業が必須となると考えております。一方で、地域・文化・思想で分断された戦略ではグローバルな人材の確保、商品の流れ、流行への迅速な対応が困難となります。そこで、グローバルに一体化した情報管理システムとダイバーシティ・マネジメントによるマーケティング体制と連結グループ経営の確立が必須と認識しております。